ホテル業界でのNPS活用法|リピーターを増やす顧客体験の可視化とは?

ネットプロモータースコア(NPS)

「顧客満足度は高いのに、なぜリピーターが増えないのか…?」
そんな疑問を感じたことはありませんか?

ホテル業界において、“満足”だけを指標にしていては本当の顧客ロイヤルティを測ることはできません。
今、注目されているのがNPS(ネット・プロモーター・スコア)です。

「他人に薦めたいか?」という視点からお客様の本音を引き出し、改善サイクルにつなげるこの指標は、ホテル経営に新たな可能性をもたらします。

本記事では、NPSの基本から、ホテル業界における活用方法、導入時の注意点、そして実践に使える設問テンプレートまでを網羅的に解説します。


NPSとは?ホテル経営における意味と重要性

NPS(Net Promoter Score)は、「あなたはこのホテルを友人や同僚にどの程度おすすめしますか?」という問いに0〜10点で答えてもらい、そのスコアから顧客のロイヤルティ(推奨意向)を数値化する指標です。

回答者は次の3つに分類されます:

  • 推奨者(9〜10点):積極的に他人に勧める人
  • 中立者(7〜8点):満足はしているが、特に勧めようとは思っていない人
  • 批判者(0〜6点):否定的な印象を持っている人

NPSスコアは、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値で算出されます。
つまり、数値が高ければ高いほど「ファンになってくれる顧客が多い」ことを意味します。

なぜホテル業界でNPSが注目されるのか?

従来の「顧客満足度(CS)」は、サービスそのものへの一時的な印象に過ぎないこともあります。
一方NPSは、「この体験を誰かに勧めたいと思えるか」という心理を問うため、実際の行動(再訪・紹介)との相関が高いのが特長です。


ホテル運営にNPSを取り入れる4つのメリット

  1. 顧客の“本音”が見える
    高評価の裏にある不満や、リピートしない理由を可視化できるため、表面的な満足度だけでは見えない課題を発見できます。
  2. リピーター・紹介客が増える
    推奨者を増やすことで自然とクチコミやSNSでの拡散が生まれ、広告費をかけずに集客効果を高められます。
  3. サービス改善の優先順位が明確になる
    どの体験(予約・チェックイン・客室など)がNPSに影響しているのかを分析すれば、改善の的が絞れます。
  4. 従業員の意識向上につながる
    NPSスコアがチーム単位で可視化されれば、サービスの質に対する責任感と連携意識が高まります。

宿泊体験におけるNPS活用の具体ステップ

ステップ1:NPSのタイミング設定

ホテルでは「チェックアウト後すぐ」または「宿泊翌日」にメールで調査を送るのが最も効果的です。記憶が鮮明なうちに回答してもらえるからです。

ステップ2:設問設計の工夫

NPSにおいて重要なのは、シンプルかつ的確な設問です。以下に、ホテル業界向けのテンプレートを紹介します。

ホテル向けNPS設問テンプレート(10項目)

  1. 推奨意向(NPSスコア)
    今回のご滞在について、当ホテルを友人や同僚にどの程度おすすめしたいと思いますか?
    → 【0〜10の11段階評価】
  2. 評価の理由(自由記述)
    その評価の理由をお聞かせください。
    → 【自由記述】
  3. 各接点の満足度(1〜7点評価)
    • 予約時の対応や手続きのしやすさはいかがでしたか?
    • チェックイン時のスタッフの対応はいかがでしたか?
    • 客室の清潔さ・快適さについてどう感じましたか?
    • 朝食やレストランなどの館内施設には満足いただけましたか?
    • チェックアウトの手続きや対応はいかがでしたか?
  4. 改善点・再訪意向
    • 滞在中、改善してほしいと感じた点があればご記入ください。
      → 【自由記述】
    • 次回も当ホテルを利用したいと思いますか?
      → 【はい/いいえ/未定】
    • その他、ご意見・ご要望がありましたら自由にご記入ください。
      → 【自由記述】

NPS結果から改善サイクルを回す方法

スコアの読み方

  • スコア単体で一喜一憂しないことが重要です。
    重要なのは「推移」と「スコアに影響した要素」を把握すること。

改善アクションにつなげる

  • 批判者のコメントに真摯に向き合うことで、サービス改善のヒントが得られます。
  • 例えば「チェックインに時間がかかった」といった声が多ければ、スタッフ配置や事前案内の改善が必要とわかります。

フィードバックの社内展開

NPSスコアを単なる数値目標にするのではなく、
「どうすればお客様がもっと感動してくれるか?」を全社員で考える材料にしましょう。


NPS運用で気をつけたい4つのポイント

  1. “スコアを上げること”が目的にならないようにする
    → 真の目的は「顧客体験の改善」であることを忘れない。
  2. 回答数が少なすぎると判断を誤る可能性がある
    → ある程度のサンプル数(目安は100件以上)を確保しましょう。
  3. 定性コメントを軽視しない
    → スコアの裏にある“感情”を見逃さないことが、改善の鍵です。
  4. 全スタッフにNPSの意義を共有する
    → 一部の部署だけで完結せず、ホテル全体の改善文化として育てていくことが重要です。

まとめ:NPSは“顧客との対話ツール”になる

NPSは単なるスコアではありません。
それは、「お客様がなぜその評価をしたのか」を深く知るための入口であり、改善と共感を生み出す“対話ツール”です。

一流のホテルは、細部まで顧客の気持ちを読み取り、体験の質を磨いています。
その第一歩として、NPSの導入をぜひ検討してみてください。

「何が顧客を喜ばせ、何が離反につながっているのか?」──その答えが、NPSには詰まっています。

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